和名: マミジロアジサシ
分類: チドリ目カモメ科
学名: Sterna anaethetus Scopoli, 1786
英名: Bridled Tern
カテゴリー: 準絶滅危惧(NT) 環境省カテゴリー: 該当なし
形態: 額から目の上にかけて細い白色部分がある。過眼線から頭頂、後頭部にかけては
黒色で、背、翼上面、腰、尾は暗灰褐色である。喉から胸にかけては白色で灰色味を帯
びる。嘴と脚は黒色である。巣立ち幼鳥と若鳥は、前額から頭頂にかけては白色の混じ
る斑状で、背から翼上面の色彩はおよそ3タイプある:_一様に暗灰褐色、あるいは羽縁
が茶色ないし白色、_背の羽縁だけが茶色ないし白色で翼上面は暗灰褐色。
近似種との区別: 本種の繁殖地のある八重山諸島には近似種のセグロアジサシ(S.
fuscata)が繁殖分布するので、飛翔個体の識別には注意を要する。セグロアジサシの頭
頂から後頚、背、翼上面にかけては一様に黒色で、頭部と翼背面がつながるのに対し
て、本種では頭部が黒色のキャップ状で後頚が白く、暗灰褐色の翼背面とに分かれる。
また額から目上に連なる白色部分の長さに差異があり、セグロアジサシは短く目の上ま
で、マミジロアジサシは目の後端まであることで識別できる。繁殖地では、セグロアジ
サシが開けた平らな場所に高密度で規模の大きなコロニーを形成し、草上あるいは地上
に直接営巣するのに対して、マミジロアジサシは海岸線の大きな転石帯や岩場の岩陰に
営巣するので容易に識別できる。
分布の概要: 太平洋、大西洋、インド洋の熱帯から亜熱帯に広く分布する。4―7亜種
に分類されるが、一致した見解が得られていない。日本に生息する亜種はS .
anaethetus anaethetusとされ、オーストラリアからマレーシア、インドネシア、フィ
リピン、台湾、日本にかけて広く分布する。日本では八重山諸島の仲ノ神島、宮古諸島
のフデ岩やパナリ岩礁で繁殖する。また1972年7月に尖閣諸島赤尾嶼で約1000
羽の本種が観察されており、その後も1984年8月、1991年5月に北小島の海岸
断崖部や沿岸で観察されているので繁殖している可能性がある。
生態的特徴: 海洋島に繁殖分布し、巣は海岸転石帯や斜面、あるいは上部の岩の重なる
岩陰の隙間につくる。巣材はあまり使わず、少数の小石やサンゴ礫片等を置く。仲ノ神
島では5月上旬に営巣地に渡来し、中旬から6月上旬に1卵を産下する。繁殖集団内で
の産卵の同調性は低い。抱卵日数は約28―30日、巣立ち日数は約55―60日であ
る。9月中旬までに、ほとんどの成鳥と巣立ち幼鳥は渡去する。基本的に沿岸採食性
で、同島の本種の食餌動物は、魚類93.1%、イカ類6.4%、昆虫類0.5%であ
り、主にトビウオ科、ニシン科、マツダイ科、アジ科等の6cm以下の幼魚を食べてい
た。また本種は、仲ノ神島で繁殖する海鳥類の中でも、漂流物や流藻に随伴する生態的
特性がある魚類を最も多く食べていた。
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